「あんた、龍人君に余計な事言ってないでしょうね。」
「は?意味が分かんないんだけど。」
「私、龍人君に告白するから。」
「・・・。」
真剣な顔で辻堂が見てくる。
「だから、龍人君にその事で相談されても余計な事言わないでよね。こっちは真剣なんだから。」
「・・・勝手にすればいいだろう。俺には関係ない。」
「あっそ、じゃあ明日言うから邪魔しないでよ。」
「ああ。」
そしてそのまま念を押すような目をこちらに向けて立ち去って行った。
「・・・。」
ついに恐れていた事が起こる。「意識するようになった」という龍人の言葉を思い出す。約一か月関係を作って来た辻堂の告白を、もしかしたら受け入れてしまうかもしれない。胸が張り裂けそうになる。このまま何も伝えずに自分の恋は終わっていいのだろうか。もし告白するのなら今日しかない。龍人の部活終わり、そこが最後のチャンスだ。
「あれ、どうしたの?」
部室の前で、珍しそうな顔で龍人がこちらに目を向ける。
「ちょっと用があって、学校残ってたんだ。ちょうどいいから一緒に帰ろうと思ってさ。」
「分かった。着替えてくるからちょっと待ってて。」
そう言ってそそくさと部室に戻る。
10分も経たないうちに龍人は部室から出て来た。
「行こう。」
そして駅へと歩き出す。その道中は学校の事や、部活の事、進路の事、特に特別な会話もなくいつも通りの会話をして帰った。
電車に乗り、最寄りの駅で一緒に降りる。そして家の方角が別々なので龍人とは駅前で別れる。一緒に帰るときはいつもこうだ。しかし、今日は少し違う。「また明日。」と帰っていく背中に声をかける。
「龍人。」
その声はきっと緊張していたと思う。龍人は何の気ない顔でこちらを振り返る。
「ちょっと話があるんだけど。」
心臓が張り裂けそうになる。
自分たちの横を仕事帰りのサラリーマンや学生が通り過ぎていく。いつもの日常の風景なのに、自分と龍人だけが異空間にいるようだった。
「何?」
「・・・うん。」
告白した後の反応が全く予想できない。緊張のあまり大きく深呼吸する。
「驚かないで聞いてほしいんだけど。」
「うん。」
こちらがこれから告白するなんて少しも思っていない顔をしている。
「あのさ・・・ずっと前からさ・・・。」