小説

『ロミオとロミオ』鷹村仁(『ロミオとジュリエット』)

本当に自分は告白しようとしている。本当にこれが正解なのか・・・。しかし喋りはじめてしまった以上もう止めることは出来ない。
「引くかも知れないけどさ・・・俺さ、龍人の事がさ・・・。」
「・・・。」
 何も言わず黙っている龍人。そこから言葉が出て来ない。恥ずかしさのあまり下を向いているので龍人がどんな顔をしているのか確認できない。でも、きっとなんとなく分かっているだろう。
それでも伝えなきゃ伝わらない。
ただ好きなのが男性なだけなのだ。
「好きなんだ。ずっと前から。」
 顔を上げる事が出来ない。龍人がどんな顔をしているのか確認するのが怖い。
「男同士だから、こんなのは変かもしれないけど、でも俺は龍人の事が好きなんだ。」
「・・・ごめん。」
 申し訳なさそうな声が聞こえる。予想していた言葉が返って来た。充分分かっていた事なのに「ごめん」の言葉に体が耐えられない。
「本当にごめん。」
もう一度謝られる。いつまでも顔を上げないから、変に気を使わせてしまっているのだ。
「輪島、顔を上げて。」
「・・・。」
 ゆっくりと顔を上げる。龍人は真剣な顔をしている。
「輪島の気持ちはありがたいけど、応えられないよ。」
「うん・・・。」
「今まで通り友達っていうのはダメなのかな。」
 何て答えればいいのか迷う。
「そんなの調子いいか。ごめん。」
 龍人は苦笑し、申し訳なさそうにしている。
「・・・ううん、ダメじゃない。今まで通りでいい。」
かろうじで答える。フラれたショックと告白の緊張から一気に解放されて、立っているのもやっとの状態。
 龍人は「ありがとう。」と答え、笑顔になった。自分の視界が徐々にぼやけていくのが分かった。
その後の事はよく覚えていない。
 そしてあっけなく自分の告白は失敗に終わった。

――――――一ヶ月後。
 まず、辻堂の結果はどうなったか。結果、辻堂はフラれた。けれど「ありえない!」とモテ街道を走ってきた本人にとっては納得がいかないらしく、今もせっせとアプローチを続けている。
 そして自分は、あの告白の日から数日はぎこちない関係が続いたが、今はなんとなく以前のような関係に戻りつつある。

1 2 3 4 5 6 7 8 9