息を切らせる程に興奮して言い切った麗羅に、白雪は静かに優しく声をかける。
「よかった、れーちゃんは私が嫌いになって離れたんじゃなかったんだね、安心したよ。でも、ちょっと不満だな。私は、私にふさわしいから友達を作るわけじゃないもん。れーちゃんが好きだから、れーちゃんとお友達だったんだよ? それは、今も変わらないからね」
ニッコリと笑う白雪に、麗羅は思わず涙が溢れてきた。
「ご、ごめんね、ユキちゃん」
「いいよ、おあいこってことで、ね?」
十年近い時を経て、二人はまた友達に戻ることができた。
五限の授業を受けている麗羅は非常に気分が明るかった。白雪との間にあった蟠りは完全に消え、再び友達に戻ることができたからだ。これも思いがけないあの頼まれごとが所以であると思うと、なんとも不思議な気持ちではあったが、終わり良ければすべて良しだろう。放課後には無事に白雪に渡せたことを伝えなければと考えていた時、となりの教室が急に慌ただしくなった。
叫び声と鳴き声、幾人かが廊下を走っていく姿が窓越しに見えた。何があったのだろう、と教室内がざわつき、しばらくしてから、救急車のサイレンが聞こえてきた。その頃には多くのクラスが授業どころではない騒ぎになっていた。
––––竹桐さんが急に倒れたらしい。
その言葉が麗羅の耳に入った瞬間、目の前が真っ暗になった。
次に彼女の意識が現実に戻ってきた時にはすでに学校中が騒ぎになっていた。ふと我に帰った麗羅は大慌てで駆け出した。
––––五限の授業中に、急に具合が悪くなって、その場で吐き出しちゃったんだって。
––––食中毒かな?
––––白雪さん、救急車で運ばれてったって。
廊下や教室のあちこちから聞こえてくる言葉に、麗羅の足は無意識に早まった。
目的の人物を見つけた時には、汗だくで息も切れ切れになっていた。
彼女は、朝麗羅を呼び出した教室にいた。
「全力疾走とか、キャラに似合わなさすぎじゃね?」
そう言って笑う彼女に向かって、麗羅は詰め寄る。
「あ、あの、クッキー…まさか!!」
「ああ、感想聞いた? て、聞ける状態じゃないか」
「どうして、こんなこと……!?」
「どうしてって、アンタまだ知らないのか。昨日、アタシの男があの女に告りやがったんだよ。んで、振られた」
「たった、それだけの、理由で……?」
「許せるわけないじゃん?」