小説

『100年目』NOBUOTTO(『夢十話』)

 きっともう少し待てばその夢は叶うに違いない。
 お花畑の向こうに、一際目立つ大きな赤い花を咲かせた木が立っていた。
 武志は美しさに惹かれるように、その木まで歩いていった。そして、その赤い花を機械の手で撫でた。
 すると花は小さく震え始めた。まるで武志に触られて喜んでいるかのようだった。大きな葉が武志の手を包んだ。木の蔓が伸びてきて指に絡まりついた。
 武志は全てを理解した。
「ああ、そうなんだね。約束通り君は再生してくれてたんだね」
 その木も花も、全ては小さな合金でできていた。ジェシーを覆っていた美しい合金だった。
「100年、そう今日が100年目だ」
 ジェシーは武志と永遠の時間を共に、そして平和に生きていくため、植物ロボットになっていたのであった。

1 2 3 4 5 6 7