仰向けになっている所に美雪が顔を覗かせる。
「20位。」
「凄くない!?去年より順位上がってるじゃん。」
親指を立ててgoodの形を作る。
「それで品川君は?」
「分かんない。ゴールしてんのかな。」
美雪が周りを見渡す。
「いた。」
すぐに見つけた。
「どこ。」
上半身を起こし、美雪の見ている方向に目を向ける。確かにそこに品川が立っていた。じっと順位が書いてある紙を見ている。
「何位かな?呼んでみよっか?」
「・・・。」
美雪が大きく手を振り、「品川君!こっち!」と大きな声で呼ぶ。品川はこちらに気が付きこちらに向かって歩いてくる。顔がなぜか笑顔だ。
「何位?」
と美雪が聞く。
「70位。」
笑顔で品川が答える。なぜ笑顔なのかは分からないが、順位では勝ったのだ。
「俺は20位だ。分かってるよな。」
「分かってる。吉永さんの好意を受け入れるなでしょ。大丈夫、何か言われても受け入れはしないよ。」
品川の返答に安心した。良かった、今回ぶっちぎりで勝つことが出来た。自分は勝負に勝った。
「ねえ、品川くん、なんで笑顔なの?」
美雪が聞く。そうだ、なぜ勝負に負けたのに笑顔なんだ。
「ああ、それは去年の順位よりも今回の方が上だから。ありがとう、勇太君。」
そう言って手を差し出してくる。
「基礎体力はあったほうがいいと分かってるんだけど、運動は苦手だからなかなか自分から動けなくてさ。勇太君がライバルになってくれてありがたかった。良い提案をありがとう。」
爽やかな笑顔を向けてくる。何だかあっけにとられてしまい、つられるように握手を交わしてしまった。
「じゃあ、またね。」
そう言って、どこかに行ってしまった。
「・・・え!?何?どういうこと?俺は品川と勝負して勝ったんだよな!?」
訳が分からず美雪に問いかける。
「品川くんの方が大人だね。始めっからあんたとの勝負なんてどうでも良かったのよ。己の敵は己、みたいな感じ。いいように使われたのよ。」
「え?俺は勝ったの?」
「勝負には勝ったけど、誰と戦っていたのかは不明。ってところ。」
「・・・。」
あいつは最初から勝負する気なんて微塵もなかった。俺が勝手に騒いで、勝手に勝負してただけだったのだ。
「違うぞ。なんか違うぞ。」
「は?」