「トゥルニエに含まれる原子量はウランの約百万倍。そんな危険きわまりない金属のかけらがかれこれ三百年もわたしの中で、黄金の龍のように、灼熱のホワイトホールのように、グルグルグルグル渦巻いているってわけよ」そういって、火星人パピコは寂しげに笑った。「ずっと隠してきたけれど、ついにばらしちゃった。じつはわたし、化け物なんだ。驚いた?」
ぼくはこくりとうなずいた。あんまりビックリしすぎて、返す言葉もなかった。
「わたし、気持ちわるいかな。気持ちわるいよね。化け物だもん……」と火星人パピコはいった。
ぼくは彼女をぶん殴った。かっとなって抑制がきかなかった。
「バカヤロー! なんでそんなことをいうんだ! 化け物だからなんだってんだ! バカヤロー! きみはそんなに綺麗じゃないか! 美人がちっぽけなこと気にしてんじゃねえ! 強く生きろ! バカヤロー!」
ぼくは夜が明けるまで彼女を殴りつづけた。
「やめて、爆発しちゃう! 爆発しちゃうから、やめて! やめてええ! 爆発するううううううう!」と口ではいいながらも、彼女は抵抗しなかった。
本当は、彼女は最強のトゥルニエ女なのだから、いとも簡単にぼくをねじ伏せられたのだ。だけど彼女はそうしなかった。
そして朝がきて、火星人パピコは爆発した。ぼくが殴りすぎたせいだ。
ちくしょう。ぼくはいつもやりすぎてしまう。反省だ。
彼女は木っ端みじんに四散した。
ぼくはバカな自分を罰するために、うさぎ跳びで帰ることにした。
しかし、うさぎ跳びで帰るには、夜の果てからぼくの町まではあまりにも遠すぎた。
ぼくはもう、かれこれ八十年もうさぎ跳びをつづけている。
ふるさとの町はまだみえてこない。