二人は手を繋いだまま走った。
女性を乗せたトラックがその異変に気づき、停まり、武装集団がマシンガンを撃ち始めた。
女性の叫び声やマシンガンの銃声の中、カッソは必死に走った。
そうして二人は密林の中に逃げ込んだ。
ハアハア、ハアハア!
どのくらい走ったかわからない。足がもつれても走り続けた。
カッソの足音は、密林の動物たちの鳴き声にかき消され、気づくと、カッソの手には、友達の手だけが握られていた。
カッソは、その手をポケットに入れた。
いつしかカッソは村の近くに戻ってきていた。
カッソは恐る恐る木陰から村を見た。まだ硝煙の匂いが重厚に残っている。
そんな村の残骸の中に、カッソが殺した兄の死体があった。カッソの兄の死体には手足があった。それはカッソにとって少しだけ救いになった。
カッソは兄に走り寄り、縋って泣いた。最後は泣き疲れて兄の死体に寄り添って眠った。
朝、目覚めるとそれらは夢で、悪い噂を聞いたばかりにとんでもない悪夢を見てしまっただけだと、カッソは思った。
だが目が覚めたときの現実は何も変わらなかった。
カッソは立ち上がり、焼けた村を見て回った。
もう誰も残っていない。昨日まで挨拶をしたり、一緒に遊んだりした人は全員、ただの肉片か死体になっていた。
カッソはふと、一丁のライフルが転がっているのを発見した。
担いでみると、カッソの身長と似たような大きさだった。そしてカッソの細い肩にずっしりと食い込んだ。
カッソはライフルを背負い、トラックの轍を追った。
すぐに、先ほどのトラックの横転事故現場にたどり着いた。
何人もの少年が死んでいた。
トラックの事故で死んだ子、マシンガンを受けて死んだ子。
「おーい」
カッソは声をかけてみた。だが、答える声はなかった。
カッソのポケットに片手を預けた友達の死体は見当たらなかった。
カッソは彼らを悼みつつ、また轍を追った。
道は険しかった。ごつごつした岩と砂利は、容赦なくカッソの足を襲う。
カッソのぼろい靴はあっという間に使い物にならなくなった。
それより腹が減った。川の水だけではとても体がもたない。
カッソは道から少し外れた密林で果物を食べた。