小説

『東北奇譚』ヤスイミキオ(『遠野物語』)

「・・・あれ・・・」 
 老女は、踵を返し、村と反対側の山の方へと去っていく。その山中には、一様に悲しい面持ちをした若い女性たちの姿が見える。
 サトルは特に気づいた様子もなく、車のスピードを上げていく。ふとバックミラーを見る。村は少しづつ小さくなっていく。遠くで川が決壊する音が響く。

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