汽車のタラップを降りて彼方へと伸びる軌道に立つ。
そこには驚くほどの静寂があってとても心地よい。
気づくと手の中に光るものがある。
小さな星が一つ。
私はそれをそっと握りしめる。
壊れないように。
逃さないように。
遠くで爆裂音の様な音が聞こえて振り返る。
そこにはライトに照らされた滑走路と銀色に輝くプロペラの無い飛行機が停まっている。
“しゅっ”と宙に飛び出せばいともたやすくあの滑走路に飛び降りれるだろう。
片側のエンジンが動いているのが判る。
また爆裂音がして今度は反対側のエンジンが回り出した様だ。
銀色の機体のドアは開いていて誰かが手を振っている。
手招きしてる。
出発を知らせる汽笛が宙に轟いて振り返る。
もう汽車のデッキには誰の姿もない。
あの飛行機に乗って行こうか。
それが鈴ちゃんとの新たな誓いなら。
私は今、微笑んでいると思う。
それはおそらく多分、私の人生で最高の微笑みだ。
この幸せの中にもう少しだけ漂いたい。
そう、私は思った。