小説

『ボックス』イワタツヨシ(『パンドラの箱』)

16
 再び、丘まで戻ってきた。
 そのとき、一機の飛行船が、ちょうど彼らの頭上を行き、飛び去っていった。
「きっとクリスたちだね」と、ジェリーは息を切らしながら、嬉しそうに言う。「どこへ行くかな」
 エミリーとドミニクも笑っている。束の間、レインが喋った。
「行き先なら分かるよ。とても恐ろしい場所だよ」
「え、何それ、どこ?」
「あの飛行船には囚人を乗せていた。そこへ連れていくために、飛行船の行き先ももう設定されていた。あの飛行船の行き先は、地球にある特別な島だよ。誰も、その島を見つけることはできないし、一度島に入ったら簡単には出ることはできない。リーリエはそこに本当の悪人を閉じ込めている。きみたちがいる箱の世界よりずっと危険な場所だよ」
「ベンジャミンやジェイも?」
「彼らも今はその島にいる」

「クリスとルシア、アマウリーはどうなるの?」エミリーが聞く。
「きっと、酷い目に遭うだろうね」
「方法はある?」ドミニクが聞く。
「今すぐに別の飛行船で追いかけて連れ戻すしかないよ」
「それなら行こうよ」と、ジェリーが言った。

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