それから女は時折やってきては機を織り、帰っていった。
豚は器用さに感動し、外に出る予定もないのに笠の編み方を習った。彼女に会うたび少しづつ、一緒に外に出かけられたら楽しいだろうな、と思うのだった。
〇
二番目の豚は、森の中にお菓子の家を建てた。見た目は木でできたようにつくったので、環境に調和している。車は通りにくいので、彼はドローンで物資を届けてもらっていた。
曰く、「子供のころの夢をアニメを見るからよく思い出すんだ。ファンシーな魔法少女やお菓子作り趣味って子推しちゃうなあ」とのことであった。
ある日、キューピッグを観てると、とんとん、とドアが叩かれた。
「ごめんください」
「ごめんください」
かわいらしい兄妹がドアを開けると立っていた。
「こんばんは、こんな時間にどうしたの?入って入って」
ずっと家の中にいる上、パソコンを見ているものだから、もう夜だなんて気が付かなかった。
そういえばキューピッグは深夜アニメだ。
「キューピッグわかる?わかんないよね、え~と、これ、一話だから、みてて」
狂った生活サイクルのせいで実感がわかないが、一桁のこどもが深夜アニメの時間帯に外に出歩いているのは危険だし、怖かっただろうし、寒く、くたくたに違いない。
急いで風呂を準備し、ベットを整え、ホットミルクを持って二人のもとに戻った。
「疲れてるよね、お風呂沸いたら入って、今日は寝な。」
「ありがとうございます」
兄がぺこりと頭を下げると、妹もひっつきながらぺこ、と倣った。
「あの…これ、お菓子?甘いにおいする」
おずおず聞く妹に、そうだよ、今日はもう遅いから、明日好きなだけ食べていいよ、というと、ぱああっと目を輝かせた。
「僕はヘンゼルで、こちらが妹のグレーテルです。」
「よろしくね」
眠そうなグレーテルを引きずりながら、ヘンゼルは風呂場に押し込んで、戻ってきた。
「二人だけでどうしたの?おうちに電話しよう?」
豚には家出なんて正気の沙汰じゃないなと思えるが、そういうこともあるのだろう。
「僕たち、置いていかれちゃったんです。グレーテルはまだわかっていないかもしれないんですけれど、家にはお金がなくって、僕たちがいると大変なようです。」