小説

『ウニを噛みしめていたい』義若ユウスケ(『私は海を抱きしめていたい』)

 わたしの住所とおなじだ。
 喫茶店ふわふわボンバー?
 知ってる。
 わたしの高校の近くにもまったくおなじ名前の喫茶店があって、わたしも学校帰りに里乃とよく立ちよっている。
 黄金モンブランってケーキも知ってる。
 毎年秋になると売り出される、わたしも大好きな、あの店の絶品ケーキだ。
 砂糖づけ受験生?
 何者だ!
 おなじ高校の人だろうか。
 「受験生」ってことは同級生?
 「ぼく」ってことは男の子?
 わたしはなんだか興奮で頭がクラクラしてきてしまった。
 パソコンに目を戻す。
 砂糖づけ受験生さんの投稿は先ほどまでは最新の書きこみだったのに、ちょっとわたしがクラクラしてる間にそれに対してのリアクションがいくつか書きこまれていた。

饅頭こわい『へえ、黄金モンブランかあ。いいね。食べてみたい』
ポップコーン男『それってやっぱり黄金色に輝いてんの!?』
砂糖づけ受験生『ええと、どうでしょう……。黄金色っていうよりは、黄色ですかね。ものすごく濃いイエローのモンブランです』
パフェの申し子『甘い? それとも、大人の味?』
砂糖づけ受験生『超甘いです』
パフェの申し子『きゃー! 超甘いモンブランさいこー!』

 わたしはキーボードに手をおとした。
 チャットの本文にではなく、砂糖づけ受験生さんのアカウントへ直接ダイレクトメッセージを送ってみる。
 自分のチャット名は「シュガーリップス」にした。

 シュガーリップス『砂糖づけ受験生さん、とつぜんすみません! あなたはいったい誰ですか? 先ほどの投稿によると、どうやらあなたは神奈川の○○町に住む高校生だそうですが、その高校ってもしかして神奈川県私立○○高校ではありませんか? もしそうだったら嬉しいです。というのは、じつはわたしも、そこの生徒なのです。わたしは女です。あなたは男の方ですか? もしよければ、すこしお話でもどうですか?』

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