小説

『拝啓、20歳の私へ』公乃まつり【「20」にまつわる物語】

彼氏のかの字の欠片も見当たらない20歳だと思いますが、以外と早く、最高に素晴らしい男性と結婚を決めて和装で写真撮影をしました。お父さんとお母さんも撮影の様子を見に来て、最後には一緒に写真を撮りました。
お父さんは超絶喜んでました。成人式に撮影をしなかった分、倍の喜びだったんじゃないかと推測しています。そう、我慢した分嬉しさ倍増、状態です。
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 いいなあ。
 今の私も、彼氏がいない。というか、人生でいたことがまだない。鍋パーティにはよく男の子も来てくれるけど、特製味噌の焼きおにぎり目的のファンが多いだけだ。胃袋は掴めても、心が掴めるとは限らない、と私は学んだ。
 けれども、この人のように、いつか素敵な彼氏が私にも出来るのだろうか。それにしてもお父さん、そっけなかったけれど実は寂しかったとか、あるかな。

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ある意味では天邪鬼に生きる姿勢というのは反感も買うし、辛い時期もあるかと思います。けれども、ファーストペンギンになれば、美味しい魚にありつけるチャンスは人より多いです。
もうファーストペンギンの話は知っていますか?ペンギンは群れで狩りをするそうですが、最初に海に飛び込むペンギンをファーストペンギンというそうです。
ファーストペンギンは一番最初に海に飛び込むのでたくさん魚を食べられるチャンスが他のペンギンよりも増えます。けれどもそれと同じくらい、天敵に一番最初に襲われるリスクも大きいです。

一番最初に飛び込むのは勇気も必要だし、リスクも大きいけれど、成功すれば魚をたくさん食べる事が出来ます。それに大丈夫。日本で生まれて、命を脅かされるような危険なんて、相当な事をしない限り起きません。
今のところ、飛び込む回数も飛び込む場所のリスクも上がってきているけれど、命の危険を感じたのは19歳の夏の自転車旅行中に熊に遭遇した事が一番です。あれ以上の事はまだ起きていません。

つづく
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