「うん? 当ててみ」
「ミシェル叔母さん家の庭でしょ?」
「……大当たり。よくわかったな~」
「だってジェド叔父さんの工房の次と言ったら、やっぱミシェル叔母さんの庭しか思いつかないもの」
「叔母さんの一杯に咲くバラの庭。本当にアリスがお茶をしていた庭そのものだったもんな。ピンクのバラに包まれるように迎えてくれる庭門。白い石で続く庭道」
「その先にある白いテーブルとチェスト。テーブルには叔母さんお気に入りの青路の陶器のポットにカップね」
「テーブルの周りをトランプの兵隊がグルグル回って警護とばかりに敬礼」
「そしたら赤いバラの茂みから慌ててウサギが飛び出してきてね。懐中時計を見ながら”おう、もうこんな時間。あ~忙しい、忙しい”と言いながら飛び跳ねて行っちゃう」
そこで何かを思い出したように、兄は一瞬だけ口を摘むんでいた。
「……叔母さん、泣いていたな。庭がダメになっちゃって」
そう、兄はぽつりと言った。
「バラも全部、燃えちゃったんだよね。私も悲しかった。……でも、周りの人たちは”命があるだけ良かったじゃないか”て、叔母さんを慰めてたね」
「庭の敷石も粉々になっちゃって……もう元に戻せないと叔母さん歎いていたけど。もし叔母さんが直そうと言ったら手伝ってあげような? 絶対」
「うん。また、あの綺麗なお庭を見たいもん」
二人は誓いを立てるように真っ暗な天井を見上げている。
でも相変わらず暗闇に響くのは――。
どどーん! どどーん!
どどどーん!!
地鳴りの音は近づいてくるばかりだった。
「……さあ、残り十四本だ。今度はお前の番だ」
「うん、わかった。いっぱい願うよ。いっぱいね」
そして兄はまた、一本マッチを取り出していた。
二人は色々な願いを想い見る。
マッチを一本、また一本と。
通い始めたばかりだった学校。
笑い合っている同級生。