――少し奥張ったところでしょうか、それがあったのは。
僅かばかりに降る斜光の下に、二つの小さな遺体が。
ああ、と心の中では声が漏れました。見慣れているとはいえ、やはり小さな子供を見るとそうなってしまいます。
ましてやその二人の手が、しっかりと握られているのを見てしまうと。
近づいて私はカンテラで炭になってしまっている二人の顔を下から照らし、覗きこみました。
大抵に鼻の奥の覗き見れば、その奥が炭になっているか爛れているようなら、それは生きながら焼かれ苦しんだとわかります。
覗き見た二人の鼻孔奥は、生きたままの薄赤色が見えました。炎で焼かれる前に、二人は有毒なガスか薄れた空気で眠るように死んでしまったんでしょう。
気休め程度の安堵です。それがまだ良かったとは、とても口には出せません。
私は仲間を呼び寄せました。二人の遺体を一輪車に乗せる為です。
呼び寄せた仲間は特に何も言いません。しかし、私の意図は無言で理解してくれていました。
仲間と共に二人の遺体を持ち上げます。握られた手が、離れ崩れないように。
ここで離さないでおいても、埋葬時には崩れ去ってしまうかもですが、やはりこの二人を引き離そうなんて誰も思いません。
これが幼い恋人同士か。それとも兄弟か。それも分かり得ないことですが。
ただ大人達の遺体から離れた所にいたこの二人には、何かしらの寂しさと不運な境遇を感じずにはいられない。それは確かです。
二人の遺体を退かして気づきました。二人の下にあった物を。
幾つもの、燃え尽きたマッチの軸木が。最初は不思議には思いましたが、寒さを凌ぐのに燃やしたのではと考えました。
そう理解しても尚――不思議な感触を感じ得ずにはいられません。二人の下にあったとはいえ、その軸木は炭になりながらも全て形となって残っていましたから。
――無意識に拾い上げていました。
手近にあった布に、丁寧に包み取って上げて。何故か数えながら。
拾い上げた黒くなった軸木を集めると、それを私はまだ小さい方の子の手に、そっと包みを添えて上げていました。
無意味なことです。本当に。
しかし憫笑される行為とは、私には思えません。
今更に思えば、炭になって崩れ去ってもいい軸木が、何かしらの強い思いでしっかりと形で残る。
あの二十本の一つ、一つに。あの幼い二人の願いが込められていた。そう考えた。いや、感じたのかも知れません。
でも、もうこの世では叶うことのない願いでしょう。
だからせめて、まだ知らぬ先の世界で、その想いが叶うことを願うということは。
――滑稽でしょうか。今の世ならそう思われても致し方ありません。