小説

『あめゆき』緋川小夏(『雪女』)

 そのとき娘の体をかすめて、ひとひらの雪がきらきらと煌めきながら舞い降りたのが見えた。娘もわたしと同じように雪の軌跡を目で追っている。新郎は気づいていないようだったけれど、きっとミユキが亮悟くんに挨拶したのだろう。
 雪はカーペットの上に落ちて、一瞬のうちに消えた。
「さ、私達も早く教会に行かないと」
 わたしと娘は、顔を見合わせて小さく笑った。
 再び窓の外に目をやると、すでに霙は止んでいた。今は柔らかな日差しが、桜の花びらを優しく照らしている。
 わたしは娘と二人、春の気配を感じながら教会へ向かって歩き出した。

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 お開きになってから式場の敷地の外に出て驚いた。道路や街路樹は完全に乾いていて、雪や霙が降った形跡は全くなかった。降ったのは、まさにこの式場の敷地内だけだった。
 わたしはミユキの言葉を思い出した。娘にも確実に雪女の血が流れている。

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