小説

『あの家、この髪』大澤匡平【「20」にまつわる物語】

不細工でもいいから、見て欲しくて。羽根なんて捨てて、音をならし歩きたくて。そう、思っていたけれど違った。

家につけば、外せばいいハロウィンの飾りだけが私を迎える。
玄関の扉をひらいても、アンティークから音がしようとも、足音は鳴らない。
あいつの部屋からはキーボードを無心に叩く音だけが聞こえる。
近道の途中、季節外れの蝉が腹を出して寝ていた。

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