小説

『UBASUTE』あきのななぐさ(『うばすてやま』)

暗く、深いその口は、今にもわしを飲み込もうとしている。
背中に息子の視線を感じながら、わしはゆっくりとその中に入って行った。

「ありがとう。たっしゃで暮らすんだよ。いい息子を持って、わしは幸せもんだ」
伝えてはいけないその言葉を、洞窟はしっかりと飲み込んでくれていた。

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