小説

『婚活パーティー20の空欄』じゅんざぶろう

18.異性に求めるものは?
「安らぎ」
 難しい問いだ。
 自分は何を異性に求めているんだろう。くれるのなら、すべて欲しいというか…。
 ここがハッキリすれば、おそらく自分の好みのタイプとかも見えてくるのかもしれない。
 とりあえず、安らぎと書いた。
 安らぎを求めているのは本当だし、疲れて家に帰ってきて、ずっと話しかけてくるような女性だと疲れてしまう。料理も作ってくれれば有り難いが、無理矢理作られても困る。たまには外食したいし。
 安らぎを求めている、つまり仕事を頑張っている、つまりちゃんとした人、という方向に話を持っていくしかない。(そんな話術力があったらこんなところに来ていない)

19.デートで行きたい場所
「海」
 もうなにも思いつかなくなってきた。デートで行きたい場所なんてない。
 ディズニーランドって書けば良いのかもしれない。
 海なんて何年も行ってないし、行ったところで何をしたらいいのかも分からない。
 もし、「海わたしも好きです」って言われたらどうしよう・・・、なんて考えるのも馬鹿らしくなってきた。
 もはやどうにでもなれという気持ちが頭の8割を占めている。逆にどうにでもなれって気持ちのっほうがこういう場では良い、って頭の中の悪魔が囁いている。
 デートで行きたいって思う場所がないから、彼女を作ろうとも思わなかったのかもしれない。
 空欄を埋めれば埋めるほど、自分という人間の中身の無さを自分自身に突き付けられているようで、もう今日のイベントを楽しむような気分でもなくなってきた。

20.明日世界が滅びるとしたら何をしますか?
「」
 何も書くことがない。
 明日世界が滅びるとしたら自分は何をするんだろう。
 食事、睡眠、セックス。
 どれも具体的なイメージが思い浮かばない。
 自分はなんてさみしい人間なんだろう。なにかを手に入れるために必死になっている人間を軽蔑してきたが、何にも欲しいものがないやつのほうが軽蔑に値するのではないか。
 ただ時間を無駄に過ごしていただけではないのか。
 何かを求めて必死に頑張る、こういう人間のほうが世の中に必要で、崇拝される存在なのではないのか。
 婚活パーティーで配られたプロフィール表1枚にこれだけのことが詰まっているとは。
 もう女性のプロフィールを見ても軽々しく質問できる精神状態ではない。
 やはりこんなところ来るんじゃなかった・・・。

 
 自分の世界に入っていたら、いつの間にか目の前に見知らぬ女性が座っていた。
「始めました、佐々木美晴です。あれ~!趣味映画鑑賞って私もです~!それと海に行くの私も大好きなんですよ~。気が合いますね!」

おしまい。

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