小説

『屋根裏の文吾』末永政和(『屋根裏の散歩者』)

 老婆が目を覚ませば、全てが明るみに出るだろう。睡眠薬を飲ませたのも俺ということにされるかもしれない。一体どこで間違ったのだろうと思ったが、結局のところ、間違った道だと分っていて歩み続けた自分の過ちでしかなかった。
 なんとなく、電気を消してみた。なぜ俺はここにいるのだろうと思った。今まで何をしていたのだろう。何をしてきたのだろう。こんなはずじゃなかった。こんなはずじゃなかったのに。
 うなだれて泣く老婆の背中が思い出された。ごめんなさいと言っていた。早くあなたに会いたいと書いてあった。自分の愚かしさが、今さらながら身にしみた。

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