小説

『ハッピーエンド』浴衣なべ(『わらしべ長者』)

「なに?」
「彼に渡してもらいたいものがあります。明日持ってきますから、彼に渡してもらえますか?」
「お安い御用だ。その代わりそっちも俺との約束を忘れるなよ」
 そう言うと橋本さんは図書室から出て行った。
 いや、ちょっと待ってほしい。一体、私は橋本さんとなにを約束したことになっているのだろうか。全く内容を把握していない。落ち着いて考えると、結構怖いような気がする。
「はあ」
 私はため息をついた。しかし、まあ、たぶん大丈夫だろう。私のとろうとしている行動は、橋本さんの要望とそんなに差がないはずだ。
 私は筆箱の中を検めた。今夜、ボールに彼への返事を書かなければならない。水性ペンはあったが油性ペンがない、学校からの帰り道、どこかで買って帰ることにしよう。

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