小説

『生まれたままの姿』多田正太郎(『北風と太陽』『オンドリと風』『風の又三郎』)

なに、ゴチャゴチャ、うるさいな!
ほら、拘りとか、違うだろ、それぞれで、よ。
それが、余計な拘りだ!
違い、全然よ、配慮してないじゃん。
なにが、じゃん、だよ! 分かったよ。
よし。で、何が言いたいんだ? 
このイソツプ話。
おや、やっぱり、知ってる、じゃん。
なら教えろよ、何言いたいんだ、この話。
分からん。なにー、分からんだとー!
ああ。なんかよ、教訓話っていうのか。
あいつのは、大体、教訓ポイ、からなぁ。
ポイだと! しっかりと教訓話だぜ!
生まれたままの姿に、よ、しておいて。
フェアじゃないだろ。
そうかぁ、フェアじゃないかぁ。
ああ。そうか、力弱き人間をよ、一方的にな。
風と太陽、寄ってたかってよ!
そうよ、何が教訓話だ!
なるほどなぁ、お前の言うの、一理あるなぁ。
よし、では、イソツプ、でないのを。
鳥とかぜ! この話ならいいだろう。
ちょつと、まてよ。何だよ?
オンドリと風、だったかなぁ。
そうだ、そうだ、ネーミングよ。
ネーミングはいいって。
それよりな、タイムリーだぜ、この話よ。
タイムリー?
鳥、ほら、鳥インフルエンザ、風邪よ!
鳥と風邪、その因果関係の話だろ。
ちょっと、まてよ、風邪?
ああ、大流行だろ、困ったもんだ。
まてまて、違うって! 違うだと?
ジムノ、でなくて、ヴィャトル。
な、な、何だよ! まじない、急に唱えてよ。
まじないだとー! そうだろ?
風邪でなくて、風!
おつ、おつ、おーつ、何だそれよー。
ポーランドよ。ポーランドだとー!
そうよ、ポーランド語。
ジムノは、風邪で、ヴィャトルは風よ。
ほー博識なんだね、お前さー。
まぁ、大体そんな感じの発音よ。
何度も、耳にしたからよ、ポーランドでな。
ほへー! ポーランドでかよ。
そうよ、そこの昔話だぞ、まぁ、聞け。

むかしむかし。
風邪こじらせてな、風の子供が、よ。
風の子供が、風邪こじらせただと。
ああ、死んでしまったのよ。
風の子供が風邪こじらせて死んだだと!
うるさいなぁ、黙って聞け!

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