小説

『生まれたままの姿』多田正太郎(『北風と太陽』『オンドリと風』『風の又三郎』)

受け入れがたい、死なぁ・・。
おっ、また何か、思いついたんだな。
当たりだぜ! 
俺に、そう俺によってな、作りだされたよ。
おっ、何だよ?
だから、作り出されたやつよ。
ガキのことか? 俺はシングルだぜ!
何言ってる、シングルだって、よ。
いない! 俺には、ガキはよ!
分かった、分かった、で?
送り出された、主役たちよ。
物語りとか、歌とかの、なんだけどな。
あちらの世界、に旅だった時。
会えるのだろうか? 会えるかだとー?
ああ、いわゆる、あの世、とかでよ。
あの世ーっ! いわゆるなぁ。
な、何だよ、わざわざ、いわゆるなぁってよ。
そんなに不思議かよ! 不思議? ああ。
ちょっと、違うんでないの、その表現。
何だよ、何が、言いたいんだよ! 
ぼかし。ぼかし? 
いわゆる、って、ぼかし、だろう。
うーん、厳しい指摘だなぁ。
だろ。だって、あの世だろ。
なんだよー、自分で、言っててよ。
だから、物語や歌の主役たちに、な。
それ、探らせようかと・・。
新作とかで、そんなのないかなぁ?
おいおい、探らせるだとう。
お前には、心底呆れるぜ。
無理かなぁ、やっぱり、よ。
そうだ! お前、知らないか?
何だよ、急に矛先をよ。
あの世、それをよ。
俺、そいつのことは、とんと、無知だぜ。
大体な、あの、ってー、のが曲者よ。
そうかー、答えてないもなぁ、確かによ。
ああ、そうとも、あの、じゃー分からん。
あの、じゃーなぁ、確かになぁ。
ああ、分からん、あの、じゃー!
宗教とかでよ、随分、違うし・・。
この疑問を、考え続けてるんだけど、な。
旅立ちってよ、シンプルなのかなとか、よ。
案外よ、そんな気もするし。
それ、お前の感じ方だろ。俺の? 
人間界って、違うだろ!
ほー、シンプルでないのか?
ああ、シンプルでないぜ。シンプルでない? 
ほら、たくさん作品をよ、書いた・・。
作家のことか? 
ああ、それそれ。それがどうした? 
最期に、な。最期に? 馬鹿馬鹿しい。
これ、漏らしたと伝わる、鴎外先生や。
いいきもちだ。これ、伝わる、賢治先生とか。
様々よ。馬鹿馬鹿しい。この真意、謎だ。
謎? そうだったり、高僧の臨終思わせるな。
そんな感じの穏やかな死、イメージされたり。
高僧のような死のイメージ? 賢治先生とか。

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