小説

『夜鷹の星』春日部こみと(宮沢賢治『よだかの星』)

ツギクルバナー

「見ろ、あのぎょろりと大きな目を。味噌を塗りたくったかのような、まだらの色を。一族のものだというのに、なぜ、ああも醜いんだろう」
 ――うるさい。
「見てるこっちがうんざりするよ」
 ――じゃあ見なければいい。
「お前に『夜鷹』なんぞ、もったいない名前だ」
 ――おれが付けた名じゃない。
「お前なんぞに名前を拝借されて、さぞかし鷹はお怒りだろうよ」
 ――そんなもの、知ったことか。

 毎日毎日、うんざりするのはこっちの方だ。
 夜鷹はかけられる悪意ある言葉の数々に心の中で悪態を吐きつつも、連中と目を合わせないように背を丸めて、悪い脚を引き摺りながらも、できるだけ早く通り過ぎる。
 ひとことでも言い返そうものなら、それこそ倍にも、三倍にもなって返ってくる。生まれてからずっと、蔑みと嘲笑を浴びせられてきた夜鷹にはそれが分かっていた。
 夜鷹は醜かった。
 生まれつき顔に黄褐色の痣が所々あり、それがまるでまだら模様のように見えた。その上目だけがぎょろりと大きく、その色もすぐりの実のように黒くずんぐりとしていて、お世辞にも美しいとは言えない。おまけに足が悪く、引き摺って歩くものだから、村の荒くれ者たちが戯れに石を投げつけてきた時も、逃げることすらままならなかった。
 ――どうしておれは、兄さんたちのように生まれなかったんだろう。
 兄である川蝉は翡翠色の瞳を持ち、弟の蜂雀は夜空の紺碧のような瑠璃色の瞳だ。どちらもその美貌から宝石のような兄弟だ、と皆から一目置かれ愛されている。
 同じ親から生まれた兄弟だというのに、どうしてこうも違うのか。
 兄や弟は自分を酷く扱うことはなかったが、けれど庇ってくれるわけでもなかった。
 兄も弟も美しいけれど、華奢で小さく、夜鷹を虐めている大柄な連中に逆らえばひとたまりもないのだから、仕方のないことだが。
陽が沈みかかった夕暮れ時。

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