小説

『夜鷹の星』春日部こみと(宮沢賢治『よだかの星』)

夜鷹とて、自分が今何をされているのか分からないわけではない。
雄でありながら、雄に犯されようとしている。
それはこの村で、男でないもの、さらには女ですらないものへと貶められるということだ。生殖の機会を奪われたそのものは、『かぎろい』と呼ばれる。『陽炎』――在って無いようようなもの……存在しないものと。
鷹が言った『殺す』とは、つまりはそういうことなのだろう。
「躰は痩せてて貧相だから、この穴も硬いだろうと思っていたが、なかなかどうして。ふっくらと柔らくて、なかなかに好さそうだ」
 鷹はひとりで悦に入りながら、夜鷹の菊門を二本の指で広げたり、奥へ突っ込んではぐちゃぐちゃと掻き回す。その仕草は乱暴で、痛みに夜鷹は鼻でヒィヒィと泣いた。
「痛いか? ふふ、そう言うわりに、おまえの小さな一物がおっ起っているようだが」
 鷹はばかにしたようにそう言い、夜鷹の中の腹側を指で引っ掻いた。
「んふぅうぅっ」
強い快感に夜鷹が喘ぐと、鷹は喉を鳴らして、ぐっ、と夜鷹の細い腰の前にふるんと揺れた陽物を掴んだ。
「ん――――っ、んん――――ッ!!」
二重の快感に、夜鷹はびくんと背をしならせて達した。
ビクビクと躰を快楽に跳ねさせ、崩れ落ちる夜鷹の髪を掴んで、鷹が顔を上げさせる。
「ああ、酷い貌だなぁ。いやらしくて醜くて、まったくこの世のものとは思えない」
投げつけられる酷い言葉も、もう夜鷹の心を抉りはしなかった。
すべてが夢ごとのようだ。
見ているようで見ていない夜鷹の眼を、快楽によるものだと勘違いしたのか、鷹がニタリと唇の端を上げる。
「おまえばかりが好い思いをしているなぁ。そろそろこちらも好くしてもらおうか」
 そう言うと、夜鷹の目の前に赤黒くそそり立った男根を突き出した。
 鷹はそれをびとりと殴られて腫れた夜鷹の頬に押し当て、ようやくさるぐつわを外したかと思うと、愉快そうに命じた。
「咥えろ」
 夜鷹は従順に応じた。
 もう何も感じなくなったから。
 透明な汁を湛えた先端を舐め、張り出した亀頭にぐるりと舌を這わせる。そのまま尖らせた舌先で陰茎の後ろを舐め下ろせば、鷹が息を乱した。

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