小説

『そらの瑕』木江恭(『王子と乞食』)

 らには残念そうに呟く。
「朝になっちゃったね、エミちゃん。私たち、元に戻らなくちゃ」
「――そうだね」
 半ば機械的に答えながら、エミはもう確信している。
 瑕はここにある。この朝生まれたばかりの、取り返しの付かない瑕。
 わたしたち、元になんて二度と戻れやしないんだ。
 エミはらにを抱きしめる。どうか早く覚めてと、夢の終わりを今か今かと待ち焦がれながら。

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