小説

『入水失敗の醜女』玉響かをり(『宇治拾遺物語』「空入水したる僧の事」)

 墓石のかけらには、だれのいたずらか定かではありませんが、下手ながらも愛嬌を感じさせる字で「入水失敗の醜女」と薄く彫りきざまれているそうです。


 教訓「このように、女性はどれほど性格や頭や素性がよくとも、容姿がよくなければ命に関わるほどの不幸に落ちてもなんらおかしくありません。しかも大抵、美女がきらびやかな人生を送るための肥やしにされるのです。それは言ってしまえば自然の摂理ですから、身に覚えのある女性は無意味な希望を打ち捨て、つねに死を覚悟しておかなくてはなりません」

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