小説

『冷蔵庫の中の女』洗い熊Q(『雪女』)

 そしてもう一つ。
 助けた事情から彼女と話をする機会があったが。
 その声は、暖炉の前で聞いた澄んだ透明感のある物ではなく、甲高い、見た目よりも幼く感じる声だった事か。

 もうシーズンは終わり、雪解けが始まったが。
 真冬になればまた僕はあの山小屋に行くであろう。
 ――あの夜に訪れて来た存在。
 正体云々より、畏敬の念があるのは間違いはないが。
 また彼女が訪れるかもしれない事に不安はそう感じていなかった。
 ――何故そう思えるか。
 熱い物が苦手であったろうに、飲み干されたマグカップが残されていたからだ。

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