そしてもう一つ。
助けた事情から彼女と話をする機会があったが。
その声は、暖炉の前で聞いた澄んだ透明感のある物ではなく、甲高い、見た目よりも幼く感じる声だった事か。
もうシーズンは終わり、雪解けが始まったが。
真冬になればまた僕はあの山小屋に行くであろう。
――あの夜に訪れて来た存在。
正体云々より、畏敬の念があるのは間違いはないが。
また彼女が訪れるかもしれない事に不安はそう感じていなかった。
――何故そう思えるか。
熱い物が苦手であったろうに、飲み干されたマグカップが残されていたからだ。