退けた雪の下から、薄緑の版の小さめの冷蔵庫が顔を出した。
必死になって冷蔵庫の下まで雪を掻き出す。ようやく全体が見えた。僕は息を呑んで、下に積もる雪に擦るように重くなった扉をこじ開けた。
――中には、ブレザーを着た真っ白な顔の彼女が胎児のように押し込まれていたのだ。
荒い息づかいで、僕は絶句した。
畳み込まれた腕に顔を寄り添い、安らかに眠る顔。その顔は暖炉の前にいた彼女に間違いない。
その姿に僕は為す術がなく呆然と座り込むしかなかった。
だが、ふいに――。
「……ん……んん……」
微かだが彼女が声を出した。
それに驚き、そして彼女を肩を掴む。
「しっかりして! 大丈夫か!?」
僕が揺さぶると彼女は僅かながら反応を示してくれた。
それからは悩む暇なく必死だ。
両手両足を縛っていたダクトテープを引き千切り、着ていたアウターもインナーの服も脱いで彼女全体を包んで上げた。
その後はもう叫ぶしかなかった。
「おーい、誰か!! 助けてくれー!」
僕の叫び声に答えてくれた様に、遠くからは軽快なエンジン音が響いていた。一応と連絡し来て欲しいと頼んだ、山岳会のスノーモービルの音に間違いない。
思い出した様に僕は発煙筒を取り出し、着火し、それを精一杯に振り上げたのだった。
彼女は一命を取り留めた。
押し込まれた冷蔵庫で寒さは防げ、作りの悪さで窒息も免れた。
診察した医師が言っていたが、それでも生きていた事は奇跡に近いと。
意識を取り戻した彼女が話した事を人伝に聞いたが、暖炉の前で聞いた内容と違いはなかった。
違っていたと言えば。
彼女は死んだのではなく気を失っただけの事。男は二人は慌てたらしく死んだと勘違いしたらしい。