「てことは、やっぱり別れたいんだな？ あいつには、はっきりそう伝えたのか？」
「いや～、さすがにそれは……。だから、態度で示そうとしてるんですけど」
「はあ？ つまり、つれなくすれば相手のほうから自然に遠ざかってくれるだろう、なんて期待してるわけか？」
「ダメですかね？」
「ダメだね」
「やっぱり……」
「そりゃそうだろう。宴会がはじまってからってもの、あいつ、おまえのことちらちら見てばかりいる。おまえが他の女と話そうものなら、般若の形相でにらみつけてるじゃないか」
「そうなんですよ。だから困っちゃって。どうしたらいいんですかね？」
「知るか。しかしおまえ、昔からやけに女にモテたけど、なんでだ？ いかにも優柔不断なタイプなのに、どこに女が惚れるのかな？」
「なんか、母性本能くすぐるらしいですよ、オレ」
「ホントおめでたいやつだよな」
「はぁ……よく言われます」
「とにかくさ、いちおう、おれの後輩ってことで上に口きいて入社させた手前、社内で問題起こされちゃ困るんだよな」
「はぁ……でも、まさかそこまでする女とは知らなくて……」
「どこに惚れたんだよ？」
「いや～、べつに惚れたわけじゃ……」
「でも、寝たんだろ？ 関係しちゃったんだろ？」
「はぁ……」
「じゃあ、惚れたわけじゃないなんて言っても、通用しないぞ、あいつには。いや、こればかりはどの女にも通用しないがな」
「そうなんですかね？」
「そうなんだよ、女ってのは」
「はぁ……」
「しかし困ったね」
「困ってるんです」
「過去の例があるからなぁ。おれとしてはなるべく穏便にすませてほしいしなぁ。まあ、しばらくようすを見るしかないか」
「え～？ いや、もう、その、いっぱいいっぱいで」
「つまり？」