ずいぶん、違う筋がきになっちゃったじゃないか。
あんなに晴れやかに宝物を見つけたような顔をするなんて。
なんだよ、カメの癖に。
そう思いながら、どこか顔がにやけてしまう。よくわからないけれど、いい気持ちだった。
ドンドンツ、ドンドンツ、刻むリズムは心臓の音に似ている。命の音だ。もう他人の目や思惑や、見た目なんてどうでもいい。昔話もどうでもいい。ただ音の波に乗る。音の波を作る。
「なんだかずいぶん、感じが変わっちゃったね」
廊下で、兎田俊介に呼び止められた。
「そうかな?」
あっさりとかわす亀山啓吾のずんぐりした後ろ姿を見送りながらち、と兎田俊介は舌打ちをした。
「なんだよ、カメのやつ、ずいぶんすっきりした感じになっちゃって。あんなに果たし状、果たし状とわめいていたのに拍子抜けだな」
「ですよねー」
ぼんやりと返事をする狸山佐南に兎田俊介は「え、何その感じ。狸らしくないじゃん?」と首を傾げた。
「オレがオレらしかったことなんか、ありましたっけ?」
「あれ? どうしちゃったの」
「別に」
なんか最近、男子変わってきたよね、文化祭が近いからかな、鹿島芽衣はつやつやした唇を膨らませて笑う。
「ねー、兎田くんは、何かするの?」
「僕は実行委員だから裏方だよ」
「きゃーん、地味だけど重要なポジションよね」
「まあ、成功も失敗も実行委員にかかっているようなものだから」
「兎田君のそういう所、スゴイって思ってるよ。がんばってね」
「ありがとう」
「亀山君と、仲直りしたの?」
「え?」