俊介の言葉に「えっ!」と若菜は驚く。そして、
「実は私、売れない漫画家なんです」との若菜の言葉に「えっ!」と俊介も驚いた。
俊介は若菜に今回のいきさつを正直に話した。若菜は、なるほどと言った感じに頷きながら、俊介の話を興味深く聞いた。それから若菜も同じく今回のいきさつを俊介に話し始めた。
売れない漫画家の若菜はスランプに陥りペンが進まないでいた。青春恋愛漫画を描こうと思うがアイディアが全然頭に浮かばない。アイディアが浮かばないのは、きっと自分の恋愛経験が足りないからだ、と彼女は考えた。ならば恋愛すればいいのだが、自分の性格からいって、そんなすぐ簡単にはいかない。どうしたもんだと悩んでいるとき偶然にインターネットで仮想恋愛のサイトを見つけた。ここに登録して仮想恋愛すれば、何か良いアイディアが見つかるかも知れない、と思い登録した。春介と言うアバターからお付き合いの申請がきた。どこかピンとくるところがあって、すぐ申請を承認した。バーチャルスペースの中デートを重ねるにつれ、どんどん春介にひかれていった。そのうちアバター春介の主のことが気になるようになり、その見えない彼と実際に会ってみたいと思うようになった。
俊介と若菜は、仮想空間の中の春介と若葉となんら変わらず、カフェでランチをいただきながら会話を交わし、楽しい時間を過ごしている。と、俊介が真顔になって若菜に言った。
「あの若菜さん、良かったら本当に僕と付き合ってもらえませんか?」
「はい。私で良ければ喜んで」
出来の巧拙はどうなることか分からないが、また一つこの世界に新しく、恋愛小説と恋愛漫画が生まれそうである。