確かに足の間にトンネルがある。
しかし、人の股ぐらを潜るなんて間抜け過ぎる。
それにここを通る為には膝を地面につかなくてはならない。
一着しか持っていないリクルートスーツが汚れる。
いや、次の面接の予定は白紙だ。
もう無いかもしれない。
直射日光が俺の頭を焦がしている。
要らないか。
爺さんのアイデアを採用し、真っ黒のアスファルトの上で四つん這いになった。
手のひらと膝が熱い。
小石が食い込む。
赤ん坊のような四つん這いで前進する。
ジーンズ。
スラックス。
スカート。
ホットパンツ。
ステテコ。
右に左に時に迂回をして這いずり回る。
たまに匍匐前進の格好にもなって様々な股ぐらを潜る。
股ぐらを潜るたび、その股ぐらから生まれてきたような錯覚に陥る。
地面の熱と手のひらの痛みが心地良く感じる。
俺が生きている証を示してくれているようで嬉しい。
一番前に辿り着いた。
手を叩くと血が滲んでいることに気付いた。
太陽に手のひらを空かす。
血管が見える。
俺は生きている。
俺だ。
俺が死んでいる。