「なあ、兄ちゃん」
「何だよ?」
「どこ行く?」
目的ができた。
俺たちはどこかに行くのだ。
「そうだな。遠くに行くか?」
「遠く?その前にちょっと体勢変えない?重いよ」
もう誰も追いかけて来ないどころか、人っ子一人いない路地裏に来ていた。
安堵が現実的な重さを引き戻した。
「変えよう」
俺たちは立ち止まって、俺は死んだ弟の頭を肩に担ぎ、弟は足を肩に担いだ。
まるで丸太を担いだような格好。
死んだ弟の顔が俺の真横にある。
「さて、遠くに行こう」
「良いね。遠く」
「ああ、俺たちで行こう」
俺たち三人は遠くを目指すことにした。
俺の真横の死んだ弟の顔を見つめた。
つくづくそっくりな顔。
俺と同じ顔。
その顔にある目がゆっくりと見開いた。
俺と目が合う。
死んだ弟が目を剥き、唇を動かした。
「俺だ」