「兄ちゃんって可能性はないかな?」
「可能性?ねえよ。だって俺は生きているんだから」
「何で分かるんだよ?」
「それは・・・」
答えに詰まる。
考える。
俺と弟と同じ顔の男が死んでいる。
その上での俺と弟の違い。
分かった。
「お前、でっけえマンボウに『ぶっ殺す』って言われたんだよな?」
「言われたよ」
「俺は誰にもそんなこと言われていない。だからだ」
面接と同じように決定力不足。
そして、俺も死んでいるようなもんだが。
これまで俺を落として来た奴らの顔が思い浮かぶ。
俺をバカにしやがって。
今日のオヤジたちも。
むかつく。
その横で弟が妙に納得した声を出した。
「そっか」
そうだ。
就活の嫌な思い出に浸っている場合ではない。
弟が死んでおり、その弟も納得しているのだから、それを第一優先にする。
こんな俺でも弟のために役に立つことはあるだろう。
「よし、お前を持って帰ろう」
「もって帰る?どうやって?」
「俺が前を持つから、お前が後ろを持て」
「分かった。でもさ、良いのかな?」
「良いんだよ。だってお前だろ?」
「そうだな」
同時に前後に別れた。
俺が脇を抱え、弟が足を抱えて、アスファルトから持ち上げた。
二人で迎え合うような格好。