「……はいはい」
置かれたコーヒーとクッキーを横に、僕はカウンターの上に散らばっていたゴムの消しカスを手で丁寧集め始めた。
あらかたのカスを集め終えると、気づけば小さな男の子が隣にいて僕の描いた作品の上からクレヨンで何かを描いていた。
「あっ! せっかくムーさんが描いたものにいたずらしちゃダメだよ」と彼女が男の子を制止しようとした。
そんな彼女を僕は引き止めた。
「いいよ、いいよ。大丈夫、大丈夫」
「でも……」
「これはこれでありだよ」
男の子が描いたもの。
何羽もの白鳩が飛び立つのを背景に。
赤や青や黄色の色とりどりのクレヨンで歪んだ線で描かれた汽車が、煙を吐きながら一所懸命に走っている姿だった。