小説

『種』もりそん=もーりー(『変身』)

 私は愚かだった。
 最初は、ただ夢を追っていただけのはずなのに。
 ほんとうに、どうして―――――(滲んでいて読めない)―――――』

『そろそろ筆を置くことにする。
 斥候だろう戦闘機が上空を飛んでいるのが見えた。もう行かなければ。まだここでは死にたくない。
 こういうのは、やはり故郷に限ると言うし。』

『これが私なりの「卒業」というやつだ。君は、こうはなるなよ。』

 
「俺さ、いつかさ、ビームとかだすよ!」
「こら、タカシ。口に物を入れたまま喋っちゃいかん」
「そうよ、行儀が悪いわ」
 食卓の向こうから両親に諭され、タカシは目に見えて不満を溜めた。彼は反抗期を迎えて久しく、意地っ張りだった。
「……いいよ! なら、修行のせいか、ここで見せてやるから!」
「タカシ! 食事中に立つな!」
 父の制止を振り切り、母の呆れを受け流し、タカシは無駄に洗練された動きで構えをとった。

 その家族の行方は、以降、明らかでない。

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