「じゃあ、Godzillaはあなたと同じね」
「にゃ・・・にゃんにゃとっ?!」
アリスはきーっと飛び上がるうさにゃんをおいて飛ぶように走った。まだまだたくさん壊れていろんなものがどんどん落ちてきていたのだ。そんなものが当たったら、きっと一発で死んでしまう。
しばらくして轟音がやんで、朦々としていた埃が薄れてきた。すると観光客たちがみんな立ち上がってパシャパシャと写真を撮り始めた。ちゃっかり者はふたつの肉塊を背景にセルフィーをとる。破壊されたビルの瓦礫を背景に、にっこりとピースサイン。
「オ〜、Tuburaya! ワンダホ〜」
盛り上がる観光客たちを後にして、アリスは汚れた顔を洗える場所を探し始めた。
* * * * * * * *
アリスは、ギラギラガチャガチャとやかましい建物の前に立って呆然としていた。顔を洗う場所を探してうろついていたら、大きな水槽を見つけたのだ。水槽には綺麗な熱帯魚が泳いでいたのではじめは水族館だと思ったのだけれど、どうやらデパートメント・ストアのようだった。(それにしてもなんてけばけばしい建物なのかしら)
お手洗いがあれば顔を洗うのに都合がいいと思ったのだけれど、中に入ってアリスは途方に暮れることになった。いたるところに圧倒的な量の商品が詰め込まれていたのだ。
家電やコスメや寝具やブランド品やお菓子や洋服や、その他色々なものたちが所狭しと積み上げられて、まるで迷路のようだった。
ドンドンドン ドンーキー ドンキー ホォーテェー
耳につくやかましい曲が鳴り響く。どうして小説のタイトルを連呼しているのだろう? アリスは首をかしげた。何かスペインと関係があるのだろうか?
それにしても、この曲を聞いているとなんだか気分が高揚して、心臓にアドレナリンが打ち込まれたようだった。アリスはすっかり舞い上がって、顔が熱くなってくるのを感じた。
口紅、つけまつげ、なにをするかわからないピンクの電化製品、温かそうな毛布、可愛いぬいぐるみ、ストラップ、ネイルにドレスに自転車に美味しそうなお菓子。よくわからないけれど、どんどん欲しくなる。