何億光年の向こう
人間たちは、今日もせっせと暮らしていて。
未来に何かを残そうと、
今日も楽しい現実を、
素敵な過去を、
抱きしめて暮らしている
私は、毒虫
ねえ?
そう。
サラサラサラ、少女の耳の奥で砂の音が聞こえた。やがて、それは、砂嵐の音となっていき、サーカスの愉快なジンタの音と混じった。ボリューム調節の壊れたラジオのように、少女の脳みそをゴッチャリとかき乱すのだった。かき乱されて、かき乱されて、その末に、静寂。その静寂の中、ぽっかりと浮かぶように、親友の声が聞こえた。
「あなたは人間よ。毒虫なんかじゃない。」
あの口の端を曲げニヤリと笑う顔を、ふと、思い出す。
なぜ、彼女はあのように自信たっぷりなのだろう。
なぜ、あんな風に、にべもなく生きていられるのだろう。
わたしの体は、こんなに毒にまみれているのに、
わたしの体からは、瘴気にも似た匂いが漂っているというのに。
そして少女は、混沌とした頭と体を整理するように、呟いた。
「…………私は毒虫なんかじゃない。私は、人間。
そんなこと知っている
案の定、毒虫にもなれやしない
うごめく、うごめく、うごめきつづけ、蠢動するだけの、
ただの、人間。」