その日も親友は、気まぐれに部屋にやってきて、毒虫の少女を眺めて、しばらく黙
っていた。しかし、イタズラでもするように口の端をグイっと曲げてから、口を開い
た。
「ねえ」
「……」
少女は、カサリと足を動かしたが、何も言うことはなかった。しかし、親友はそんなことお構いなく、何回も何回も
「ねえ」
と声をかけ、
「今日はお話しをしないの?」
と、話しかけるのだったが、少女はそんな親友を一瞥もせずに、
「一度だって、こちらから話した事があったっけ?」
と答えた。しかし、それすら親友はさらりと笑い飛ばし、
「さあ、どうかしら。」と答えた。
「あたしはね、毒虫になってしまったのよ。」
「それは随分ね。」
衝撃的な告白だったはずの言葉も、親友には特に構うことではなかったらしく、そっけなく答えた。
日の光がやけにまぶしく感じ、親友がお茶を啜る、ズズリという上品な音が部屋の隅々まで染み渡った。
それから陽が沈んだが、彼女は、いつまでもそこにいた。
少女は、親友を気にしないそぶりをしていたが、親友は澄み渡る目で彼女を眺めたのだった。
「……だから…見ないでほしいのよ……。あたしのことなんか、そんなに。」
彼女は、実に恥ずかしそうに目を伏せた。しかし親友は真っ直ぐに少女を見つめ、
「いやよ。」
と、たっぷりと答えた。
それから、部屋の天井にポツリポツリと二人の声が浮かんだ。
「わたし、あなたを観測してるんだもの。」
「わたしは、星ではないわ。」