ぐるぐるぐるぐる回り、回り回った後に、気がついたのは、
「……実のところ、自分が毒虫になったということに、少しホッとしていた」
ということだった。
普段、カーテンを開ける事のない部屋だったが、毒虫になってからというもの、日の光が妙に恋しくなり、慣れない手足でなんとかカーテンを開けたのだった。
「陽が昇り、そして、陽が沈む」
それだけのことがなんと綺麗なことだろう、と思った。
こんな風に、日がな一日、日が昇って沈むことだけを眺めた事があっただろうか?
と、少女の耳の奥で、サラサラッと砂が溢れるような音がした。
かつて少女が人だった頃、いつも聞こえてた音。砂の音は、やがて脳の奥を引っ掻くような砂嵐の音となり、かすかにサーカスの愉快なジンタの音楽が聞こえ始めるのだった。脳をガリガリと響くような砂嵐の音と、愉快なジンタ。奇妙な音の組み合わせは、少女の自律神経をひどく衰弱させ、地面が天井なのか、天井が地面なのか、はたまた、壁という壁は、本当は壁ではなく布で覆っているだけじゃないか?など、様々な思考の乱反射が高速で行われ、今、自分がどこにいるのか?ということすらわからなくさせた。
人として生まれたからには、
何かをなさなくては
結婚をしなくては
子供を創らなくては
人の役にたたなくては
人には優しくしなくては
お金をかせがなくては
幸せにならなくては
幸せにならなくては
幸せにならなくては
しなければ、
しなければ、
いけない
いけない
人として、人として、人として、