「ありゃあ。」
お爺さんの若者は、一瞬のうちに、なにが起きたのかさとりました。仕方なく、お爺さんの若者は、赤んぼうを抱っこして家に連れ帰りました。
さあ、その晩から、たいへんです。
赤んぼうは泣いて、泣いて、泣き止みません。若者はほとほと困ってしまいました。しかたなく、うろ覚えで、ご飯をたっぷりの水で炊き、できたお粥を薄布でこして、「重湯とか言ったかな」というものをこしらえて、ふうふうさましながら、赤んぼうに飲ませました。めじりに涙を残しながら、それでも赤んぼうが飲んでくれたので、若者はほっとしました。
今度はおしっこの洪水。おしめとして巻き付けておいた手ぬぐいはびしょびしょ。あわてて手ぬぐいをはぎ、下に敷いていた、濡れたおばあさんの着物を取りのけて、赤んぼうのからだをきれいに拭き、新しい手ぬぐいでおむつをし、下に自分の着物を代わりにしきました。寒くないように、いろりの火をどんどんたきました。裸で震えながら冷たい水で洗濯し、おむつや着物を火でかわかしにかかりました。
赤んぼうがまた泣き出しました。若者は自分が泣きたいくらいでした。こうしたことが繰り返され、その一晩で若者はへとへとになり、おまけに一睡もできませんでした。
一夜明けましたが、疲れ切って眠ってないからといって、ぼんやりなどできません。売れ残りの炭を抱え、赤んぼうを背負うと、お爺さんの若者は、大泣きする赤んぼうを猫じゃらしであやしあやし、町へ出かけました。途中おしめをびしょびしょにされ、取り替えに大汗をかきました。
若者の住む小さな村は、年寄りばかりで、子どもを生んだ若い娘はいませんでした。若者は庄屋さんの家へ向かい、若返りの水のことは内緒にして、事情を話し、赤んぼうを育ててくれる人を紹介してくれるように、炭を差し出して頼み込みました。妻は子どもを産み終えるとすぐに亡くなった、ということにしました。
「助かったあ。」
若者は肩の荷がおりました。庄屋さんの口添えで、赤んぼうが少し大きくなるまで、とある子どもを生んだ家で、預かってくれることになりました。