受賞作品:
『ユキの異常な体質/または僕はどれほどお金がほしいか』(『雪女』)/ 大前粟生
受賞理由:
1,886作品の応募があった第2回ブックショートアワードで頂点に輝いたのは、大前粟生さんの『ユキの異常な体質/または僕はどれほどお金がほしいか』でした。
「朝起きるとバケツのなかに水がたまっていた。」という一文から始まる受賞作は、夏に憧れた雪女のお話。”雪女が溶けて水になる”というワンアイデアを、巧みな文章と豊かな想像力で膨らませた作品です。現在と過去の往還のなかで語られる主人公ユキオとユキの奇妙で魅力的な関係は、読者を強く惹きつけます。広く知られた原作の設定を随所に散りばめつつ、それを助走に物語を大きく飛躍させた、今回もっとも大賞にふさわしい二次創作でした。
また、今回、大前さんは受賞作『ユキの…』を含めて14作品を応募。いずれも受賞作に劣らぬハイレベルな作品でした。さらに、大前さんは今年、「GRANTA JAPAN with 早稲田文学」の公募プロジェクトでも最優秀作を受賞しており、ブックショートアワードで二冠目。今後の活躍がますます期待されます。