小説

『姫とHIME』NOBUOTTO(『かぐや姫』)

「そうですか、ここにSG3もいたのですか。ジェシーさんは、今日は帰って下さい。SG3からの感情共鳴実験は私がやっておきます」
 博士は、格納BOXからSG3を移動させエッグに接続しその中に入って行った。
 博士が次の日に研究室に行くとジェシーが青ざめた顔で立っていた。 
「どうしましたか、ジェシーさん」
「博士済みません。私はどうしてもこの二人を地球に戻したいという感情が抑えきれませんでした。やはり、原始感情は判断を誤らせる原因となります。折角技術的な成功を収めたアンドロイドだったのに済みません。今から回収にいきます」
 博士はうなだれているジェシーに寄り添うように近づいて言った。
「回収は結構です。あなたが”二人”、そう”二人”ですね、地球に戻さなくても、私が同じ事を行っていたでしょう」
 そして天井を少し見てからジェシーに向かって行った。
「本研究を継続するかどうかこれまでも考えていたのですが、SG3との感情共鳴で辞める決心がつきました。この研究はこれで終わりです」
 そして博士は監視モニターをながめた。
「そうですか、二人は地球に戻ったのですね」
 そこには都の人々に迎えられる帝とHIMEが写っていた。心からの笑顔で翁と媼と抱き合っているHIMEがいた。帝も頭巾をとっていた。顔のヒビが無くなっている。
「ジェシーさん、SG3ですが…」
「かなり、壊れていましたので、これから地球で暮らすには不便かと思い修理しました」
「そうですか」と博士は嬉しそうに言った。
「実は昨晩私もこれまでのデータ全てとエッグの設計書を公開してしまいました。これでこの国の誰もが原始感情を共感できるようになるはずです。アンドロイドでさえこれだけ豊かな感情をもっています。私たち人間が持っていけないはずはありません」
「博士、それでは本当に反政府運動者となってしまいます。この研究が終わりになるどころ
か博士の身が危なくなります」
「そうですね。だから原始感情は撲滅しないといけない」

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