小説

『姫とHIME』NOBUOTTO(『かぐや姫』)

「我々はお前達の道具ではない」
 帝がそう叫んだ時に船から光がでてきて帝を包み込みました。光が消えると帝もいなくなっていました。かぐや姫だけでなく帝をも失った翁、嫗、そして兵士達は嘆き哀しみました。数千人もの嘆きの感情を共感したHIMEは船の中の回収ボックスの中でガタガタ震えていました。

*惑星*
 HIMEとエッグを接続したあと博士とジェシーはそれぞれエッグの中に入っていった。二人が中央に立つと静かにドアが締り、HIMEの感情データがエッグ内壁全体から二人の体に注ぎ込まれていった。地球でHIMEが共鳴してきた感情が順番に博士とジェシーの中に入り込んでいく。博士のエッグのスピーカーにジェシーの笑い声、叫び声が聞こえて来た。
「ジェシーさん、大丈夫ですか。初めての共鳴体験としては今回の原始感情は強すぎるようです。辛いようでしたら実験を中止しても結構です」
「あっ。はい、博士大丈夫です。これはモニターでみていた祭りの原始感情のようです」
 しばらくの時間が過ぎた。ジェシーが博士に話してくる。
「博士、この静かで深く体全体に染み混んでくるような感情、この体全体を押しつぶすような原始感情は何なのでしょうか」
「これが愛情の原始感情です。私達が感じている理性的な愛情とは違うものです」
 感情抽出が終了し二人はエッグから出た。初めて感情共鳴を体験したジェシーは、エッグから出た後も体が小刻みに震えていた。
「HIMEの感情蓄積成果は期待以上でした。ジェシーさん、初めての経験で疲れたでしょう。データの分析は明日にしましょう」
 研究室から出ようとしたときに、アンドロイドの格納BOXが全部埋まっていることに博士は気づいた。行方がわからなくなっていたアンドロイドが格納されていた。
「このアンドロイドは、以前地球に配置したSG3ですね」
 まだ、体が震えているジェシーは声を絞り出すように答えた。
「はい、無力化光線を受けたにも関わらず攻撃を続ける地球人がいました。分析してみるとアンドロイドだったためHIMEと一緒に回収しました」

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