「はは、こんなの、問題になっていませんよね。正解です。今日はミチコさんの誕生日です。あの、ミチコさん。少しの間、目を瞑って下さいますか」
待ってましたとばかりに目を輝かせ、そしてその目を閉じるミチコ。一体どんなプレゼントが貰えるのかしら、なんてったって今日は私の誕生日、ふふ。
「ミチコさん、目を開けて下さい」
胸一杯に期待を溜め込み溜め込んでミチコの胸は埋め尽くされ、パンパンに膨らんだその体を前のめりにして、ミチコは目を開き僧侶の手にある物を確認すると、そこには一枚の婚姻届があった。にっこりと微笑む僧侶。
「ミチコさん、私と結婚しましょう。今日はあなたの誕生日ですが、同時に、私たちの結婚記念日にしたいんです」
ミチコは呆然と婚姻届を眺めた後、
「え、ええまあ。いいわよ」
「本当ですか?」僧侶は興奮を隠しきれないように。
「ええ」とミチコ。
「よかった。今日が私の人生において最良の日です。ミチコさん、これからも二人で、手と手を取り合って歩いていきましょう」目に涙が浮かべて喜ぶ僧侶。
しかしながら呆然としたまま表情をかえないミチコ。
「で?」
「え、なんですか?」
「で、私の誕生日のプレゼントは何?」ミチコは淡々とした口調。
「いや、あの、この婚姻届が、私からのプレゼントです」
「あ、え?これで終わり?私の誕生日に、これで?」
「そ、そうですけど…。ミチコさんの大事な日に、お金じゃ買えないものをプレゼントしたかったんです」
「はあ?なにそれ。おかしくない?え、おかしくないそれ」
「おかしいですか…」
「おかしいでしょ!今日は私の誕生日よ。ねえ、愛してないの!私のこと!住職さん、本当に私のこと愛してるんだったら、ちゃんと形で示してくれる?」
「そ、そんな…。ミチコさん、愛と物欲を混同したらいけませんよ。よくないです」
「なによまた説法のようなこと言って。僧侶みたいなのはその意味分かんない服装だけにしてくれる?ねえ住職さん、私はあなたの愛が欲しいの。くだらない説法が聞きたいわけじゃないの」