「ありがとう、アリス」
そして、彼女は私の手を引いてこう言った。
「ねえアリス、私とお友達になってくれない? ひとりぼっちじゃつまらないわ」
「ええ、もちろん」
私は答えた。
「私はあなたの、シャーロットの友達よ」
「うれしい!」
小さなシャーロットは、ぱっと顔を綻ばせた。その笑顔は、ほんの少しママに似ている。
「あのね、今、舟を作っていたの。葉っぱの舟よ。それでこの水路に浮かべようとしたのだけど」
「足を滑らせて水に落ちたのね」
私が少しからかうように言うと、小さなシャーロットはぷうっと膨れてみせた。
「だって、ちっとも上手く浮かばないんだもの」
「私が作ってあげようか」
「アリスも舟を作れるの?」
小さなシャーロットが、驚いたように私を見上げる。私は頷き、手近な木の葉を拾ってくるりと丸めた。
「小さい頃にね、私のママに教わったの。葉っぱの真ん中に小さな穴を開けて、茎のところを通すのよ」
ママが家出をしたおかげで、私は生まれも育ちもロンドン郊外だった。でもママは、毎年夏になると、私を森へ連れて行ってはこうして遊ぶことを教えてくれたのだった。
そしてきっと、ママはこの家でおばあさまから同じようにして教わったのだろう。めぐりめぐって今、私がこの小さなシャーロットに舟遊びを教えている。
「今度は、水車を作ってあげるわね。あんまり上手じゃないんだけど」
「水車も作れるの? アリスってすごいのね」
ころころと表情を変えるシャーロットの姿を見ていると、ママから聞いていた厳格なおばあさまが嘘のようだった。誕生日プレゼントやケーキに胸を躍らせ、日記帳に自己紹介し、葉っぱの舟で遊んでは水に落ちる。こんなシャーロットをもしママが見たら、一体どんな顔をするだろう。
「次は水車ね。きっとよ」
「わかったわかった」
私の手を掴んで何度も揺する小さなシャーロットの手を、私もぎゅっと握り返した。
「シャーロット!」