—「お父さんこぼしてる!」
娘の声に、僕ははっと自分が持っている赤いものを見た。—西瓜だ。
真っ赤な西瓜は、あまりにもみずみずしく、口に入りきらなかった水分は下にぽとぽと落ちていっていた。
蝉の声がうるさい。僕たちの座っている縁側は、あまりに蝉の声がきこえすぎる。
僕は僕の左にちょこんと二人並んで西瓜を食べている娘と息子を見、
「そうだ。お前たち。明日は蝉取りを教えてやろう。」と笑顔で言った。義母も台所から、
「そうしてもらいなさい。」といって僕の提案を勧めた。娘と息子はもちろん、満面の笑みでうなずいた。
僕はそれを笑顔で見守っていた。まだ頭の片隅に、真っ赤な歯車を回転させながら・・・。