「詩織に合ったさ、詩織らしい仕事を」
「うん・・・」
ようやく、素直な言葉が出た。
次の日の面接はサイテーだった。幾度となく繰り返してきた同じセリフに、詩織自身嫌気がさしていたのかもしれない。この会社に入って、何がやりたいかを尋ねられたときだった。
「はい・・・」
用意していた答えを言おうとして言葉が止まる。
「えっと・・・やりたいことは、本当にやりたいことは、イベントの演出とかなんです」
自分でも何でそんなことを言っているのか分からなかった。
「限られたスペースや費用の中で、期待されたもの以上のものをつくって、『すごいね』って驚かれるのが嬉しいんです。手作りすれば色々安くできて、これも全部自分たちで作ったの? って驚かれると、褒められてるみたいで。それが楽しくて」
詩織の声が大きくなる。
「小さい頃から、自分でつくるのが好きだったんです。他の子はみんな買ってもらえても、わたしは買ってもらえないことが多かったから、似たようなものを自分でつくるしかなくて。でもそれで本物みたいなものがつくれるんです。イベントだって、ファッションショーとかコンサートとか、少し工夫すれば本格的なものができて。だから大学ではずっとそんなことをしていて。それが私のやりたいことで。そういうことをやっていきたい、そういうことを仕事にできたらなあって・・・」
端に座った面接官がめくっていた履歴書を閉じる。隣の面接官に耳打ちするのを見て、詩織はそこで話すのを止めた。
「でもそれじゃあ、御社の活動と違うんですけど・・・」
相手が言う前に自分で締めくくる。やってしまったという後悔が脇から流れ落ちる。詩織の履歴書に何かしら書き留め、中央の面接官が咳払いした。
「面接の結果はもちろんまだ分からないんですが、ひとつ」