テーブルの上に置かれた封筒を見つけて、詩織は嫌ぁな予感がした。じろっとリビングのソファを睨み、封筒に手を伸ばす。
やっぱり。
隠そうとする様子もなく、封筒には既に開けられた痕跡がある。
「勝手に開けないでって言ってるでしょ!」
返事のないソファを詩織はもう一度、睨む。
ビール片手に「へへっ」とテレビを眺める岳志の横顔。目ん玉がちらっと詩織の様子を探る。そのわずかな動きを詩織は見逃さなかった。
「サイテー」
すかさず、ぶつける。
「いや、市役所なんかからの手紙かと思ってさ。ほら、税金とか」
「サイテー」
「見てないから、何も。結果なんて」
「サイテー」
「俺も父親としてちょっとは心配」
「サイテー」
赤ら顔にチー鱈と350ml缶を交互に運びながら、岳志は相変わらずテレビに満面の笑みを注いでいる。今日は珍しく早上がりだったのだろう。除草作業に深夜警備、ネット開設から農薬散布。日雇い派遣の何でも屋のような仕事をしている岳志と、就活にバイト、サークルも続けている詩織が顔を合わせるのは、週に一回あるかないかだった。
「もっとさ、自分のやりたい仕事にしたらどうなんだ?」
「やっぱり手紙、見たんじゃん」